自分に責任があるならまだしも、何もしてないのに人から怒られることが好きな人はいません。コールセンターの仕事というとなぜかセットになってしまう言葉の1つが「クレーム」です。コールセンターに限らず、コンビニ・ガソリンスタンド・アパレルや営業も、お客様を相手とする仕事のクレームは切っても切れないはずです。ですが、なぜコールセンターだけがピックアップされてしまうのでしょう。今回は、コールセンターのクレームは怖くないということをご紹介します。
クレームと言っても一言では言えません。どういったことがクレームであり、どうしたら未然に防げるのか見ていきたいと思います。
クレームと言われて想像することは、怒っているお客さん。理不尽に怒鳴っているお客さん。サービスや商品に対して、なんらかの文句を言う人というイメージが多いでしょう。最近では「モンスター○○」という言葉も良く聞くようになりました。これは「理不尽にクレームを言ってくる人たち」というような意味を大きく含んでいます。しかし、実は「理不尽に」、「困らせよう」としてクレームを言ってくる方は、ほとんどいません。提供した商品に問題があったり、対応したスタッフに問題があったり、ちょっとしたボタンの掛け違えだったりと何らかの要因があって、クレームは引き起こされるのです。
では実際のクレームはどういったことなのかご紹介します。
プリンを買ったら、当然スプーンを入れてくれるものだと思っていた。だからレジでは何も言わなかった。
「エコロジーに配慮」して、「必要ならお声掛けください」と運用を変えていた。レジ前にポップも掲示していた。
注文後、まだかなと思いつつ30分店員に確認せず待っていた。
お店はピークタイム。かなりの混雑でオーダーが抜けてしまっていた。
口約束で日にちを確認しており、その品物を○日から販売すると告知してしまっていた。
約束は「だいたい○日」というニュアンスで伝えるつもりだった。正式な契約書は忙しくて後回しになっていた。
実は、相手とのちょっとした掛け違いがクレームを引き起こしているケースばかりです。みなさんも「クレーム」にはせずとも、こんな経験が少なからずあるはずです。
クレームが発生するのには、全て「きっかけ」があります。そこで、スタッフの対応が「失敗」してしまうと、「クレーム」に発展してしまう可能性が高くなります。
どのケースも、「お客さまの立場に立って」というサービスができていたら、クレームが防げたケースに見えます。もちろん100%防げるわけではありませんが、そんな対応を心がけられれば、クレームは未然に防げるものだと思います。
コールセンターの話を中心にご紹介します。コールセンターも「サービス業」である以上、クレームは存在します。ただ、電話の仕事ですので、クレームも「対面でのクレーム」はほぼありません。身の危険もありませんし、顔を覚えられることもありません。これは他のクレームと比べても、良い点であると言えます。
もし、クレームの電話を取ってしまったらどうしたら良いか迷い、なんとかして自分でお客さまの怒りを収めなきゃと考えてしまうと思います。しかし、そうではありません。先ずはお客さまのお話を聞くことから始めます。理由もなくクレームを入れてくる方はいません。必ず何かしらの事象があって、クレームへと発展しています。ですのでまずは、「何が不満であるのか」「何があったのか」を務めて冷静に、真摯に聞くことが必要です。「あなたの怒りや悩みを真剣に聞いています」という気持ちで聞いていると、お客さまの怒りはだんだんと落ち着いてくるものです。それから、「では解決に向けてどう対処するのか」という案内をしつつ、解決へと導いていくことです。
コールセンターには必ずSVがいます。クレームの中には、自分で対処できないものもあるかもしれません。そんなときに、SVはすぐに駆けつけます。SVはいろいろな事例を知っていますし、みなさんが出来ない対応も責任感を持って対応してくれます。対処しきれない場合は、電話を代わって二次対応もしてくれます。「コールセンターのクレームは怖くない」と言われる1番の理由は、「頼りになるSVがいる」ことだと言われています。
最後にクレームから逆転してヘビーユーザーになる、という事例を簡単にご紹介したいと思います。
結果として、当日荷物が届くことはありませんでしたが、コールセンターが行った真摯な対応で、1人のファンを作ることができた事例です。
コールセンターの仕事というと、心配だとか不安だとかみなさんが言うのはやはり「クレーム対応」のことが多いです。実際働くスタッフが、どのようにクレーム対応をしているのかインタビューをしました。ここからは、スタッフのクレーム対応編をお届けします。
もともとはアロマセラピストをしていました。その後、美容系コールセンターで主に女性のお客様から、エステ店舗へのお叱り、解約や返金など受け付けるセンターで1年間勤務し、現在はPCメーカーのサポートデスクを担当しています。
──厳しい電話も多かったと察しますが、クレームは苦ではなかったですかクレームの電話が大半です。基本的にお客様のお肌などに関するシビアな内容ですので、そういう意味では厳しい電話が多かったと思います。でも、そんなに苦しいということはありませんでした。クレームの電話は、私たちで解決できる範囲というものが決まっています。その範囲を超えたものは、専門チームの方々へ転送できますし、長い時間通話している電話は、管理者の方が気づいて、隣でサポートしてくれます。孤立してしまうようなことはありません。
クレームの電話をしてくださるお客様って、とても有りがたい存在なんです。その会社について諦めてしまっていたら、そもそも何も言ってはいただけないでしょう。どうにかしたいという思いを持っていただいた方が多いので、ご意見は有り難く受け止めるべきだと思います。でも最初はこのように考えられなかったです。慣れていくうちに、このような思いに至りました。
電話を受けるということは、厳しいご意見を頂戴することや、お叱りを受けることも少なからずあります。しかし、専門的なことは専門チームが対応してくれますし、最終的な責任は会社が取ってくれますから、気楽な気持ちで向き合うと、全く苦にはならないと思います。むしろ、このようなお客様から最後に「ありがとう」と言っていただいた際は、とてもうれしい気持ちになります。
もともと英語が少し話せましたので外国人の方専用の窓口で様々なお問い合わせを受けていました。その中に、苦情専用窓口というものもあります。例えば、あるPCメーカーの苦情対応をしていますが、テクニカルサポートに電話しても、カスタマセンターに電話しても埒が明かないという、非常に感情的なお客様からの電話が多いです。
──クレームは苦にならなかったですか最初は動揺することもありましたが、慣れの問題だと思います。様々な社内の研修を受けたり、電話応対をする中で、苦情を申し出るお客様の状況に合わせて対応していくことが大事ということがわかり、それからは冷静に対応できるようになりました。
──お客様の状況に合わせた対応とはまずはとにかく感情的で、一言物申したいというお客様です。このようなお客様には、とにかくお客様のおっしゃることを良く聞くことです。話を聞いてあげることで、ある程度の感情が収まりますので、そこから冷静にできる・できないという対応をしていきます。まずはお客様にも冷静になっていただければ、その後の話は割とスムーズになります。
次に、冷静に淡々と苦情をいただくお客様です。このようなお客様は感情的ではなく、理論的に話をされる方がほとんどです。謝罪をすることや、相手の感情に合わせた対応だけでは解決しません。理論的に話をされている内容を良く聞き、こちらもお客様の理論をしっかりと理解しているということを示してあげることが必要です。その上で、何故できないのかということを丁寧に話していくと、スムーズに対応できます。
入社から2~3週間である程度のお客様タイプがわかるようになります。1年もかからないうちに応対のプロになれます。このスキルは、日常生活や他の仕事でもきっと役に立つものだと思います。社内研修でもありましたが、いわゆるクレーマーというお客様は重要で、怒られているお客様ほど、しっかりと対応できればお礼が返ってきます。実際にお礼の電話やメールをいただくことも通常の対応よりも多いです。それが、私にとってのやりがいを感じられる部分です。
──不安を抱える応募者の方へ一言お願いしますもともと電話が大嫌いで、人とのコミュニケーションも苦手でした。もしかしたらこのような苦手を克服できるのではないかということ。アルバイトという気楽な気持ちで応募しましたが、今は電話も好きになりました。自分が思うよりもちゃんと対応できるなと思いました。クレームという言葉のイメージが先行していることがあります。しかし、悪意のある人はいませんし、たまたま感情的になってしまっている方なのです。必ず管理者がいてサポートや二次対応をしてもらえますし、このような経験ができる仕事ってとても為になると思います。
クレームは、誰しもが恐怖を感じてしまうものです。ですがそれは、お客さまの「困った」の裏返しでもあります。1人ではなく、コールセンターというチームで、その「困った」を改善することもできます。これもコールセンターの仕事の醍醐味の1つと言えると思います。
© BELLSYSTEM24, Inc.